〈JCJ Online講演会〉「いま、地方から発信する意味—なぜ全国紙記者からフリーに?」講師:元朝日新聞記者・宮崎園子さん
被爆地の広島に根付き、一生活者として深く取材をしたい。そんな思いから宮崎園子さんは広島支局勤務を最後に、2021年夏に19年間勤めた朝日新聞を退社した。現在は子育てをしながらフリーで取材の仕事をしている。経営の悪化を背景に、地方の取材拠点をどんどん縮小させている全国紙について「ジャーナリズムの毛細血管が壊死しかけている」と警鐘を鳴らし、「東京がすべて」という発想を疑問視した。広島の「平和教育」の問題にも触れ、1945年8月6日の被爆の日だけ、「過去の点」だけに焦点を当てるだけでは限界があり、過去から現在につながる面の問題、足元の今の問題にも目を注ぎ、考える教育が必要だと語った。それは広島の平和運動のあり方とも関係するという。地方で暮らす一女性の目から世の中を眺め、取材・執筆を続ける、宮崎さん流ジャーナリズム論は刺激的だった。
■開催趣旨:
被爆地の広島に根付き、一生活者として深く取材をしたい。転勤の多い全国紙では、どこの地域社会にも根を張れない。ならば、と宮崎さんは決断した。
ニュースの現場は地方にある。例えば2021年8月6日の出来事。当時の菅義偉首相は広島で開かれた平和記念式典で、あいさつ文の一部を読み飛ばした。理由は「原稿がのりでくっついて、はがれなかったため」と報道された。疑問に思った宮崎さんは広島市への情報公開請求により、あいさつ文原本を手にする。のりでくっついた痕跡はない。あの報道はどこから流された情報か……。子育てをしながら取材・執筆を続ける、宮崎さん流ジャーナリズム論に耳を傾けたい。(2022.3.19)
■講演者プロフィール:
宮崎 園子(みやざき そのこ)。1977年、広島県生まれ。高校卒業までを香港、アメリカ、東京などで過ごす。慶應義塾大法学部卒業後、金融機関勤務を経て2002年朝日新聞社入社。神戸総局、広島総局、大阪本社社会部、生活文化部で、警察・司法、災害、原爆・戦争、社会福祉などを担当。2021年7月退社。現在、広島を拠点に、取材・執筆活動を続けている。
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