〈2025.9月号 書評〉辻元清美+小塚かおる(著)「日本政治の大問題」・・・有識者の貴重な意見や分析を糧に日本の在り方を探る  評者:鈴木 耕(編集者)



 リベラル派の若き旗手として政界に躍り出た辻元清美氏も、もう還暦を越えた。今や重鎮政治家として日本の舵取りを担うべき地位にいる。彼女が対談相手に選んだのが日刊現代第一編集局長の小塚かおる氏。日頃から息が合う友人関係だから日本政治の奥深い闇を徹底的に語り合える。
 辻元氏が珍しく弱音を吐いているのも、心を許した相手だからだろう。
 彼女が国会を舞台にした「飲み食い政治」を拒否し、新しい風を吹かせたことも有権者の記憶に残る。その記憶をもう一度確かめながら、新しい日本の在り方を探る。
 知的好奇心は今も旺盛。だから、二人は五箇公一さん(国立環境研究所・ 保全生態学)に、気候変 動やエネルギー問題について、教えを請いにつくば市にまで出かける。
 さらには、辻元議員所属の立憲民主党のSNS対応の弱さと他陣営が巻き起こした選挙戦での地殻変動の要因を探りに、古谷経衡さん(作家・評 論家)を訪ねる。
 この二つの鼎談が面白い。五箇さんからは「新 ウイルス襲来」などの原因と対策を教えられ、人類の生き延びる道は政治の役割だと得心する。古谷さんの、参政党の分析や陰謀論をめぐる分析に納得する。政治家としてジャーナリストとしての興味のあり方と進むべき道の発見の経緯が、まことに痛快だ。
 女性が直面する政治の世界の息苦しさ、その打破は、ベテラン議員になった現在も辻元氏にはそれこそ「大問題」であ る。そこをどう突き破るのか、政治を男女差のない場に取り返すための二人の論議は今後も続くだろう。本書は読んで楽しい「政治論」だ。(朝日新書 900円) 鈴木 耕(編集者)



日本政治の大問題 朝日新聞出版 (2025/5/13)