〈2025.12月号 書評〉友寄 英隆(著)『人間とAI──社会はどう変わるか』・・・科学的社会主義の立場からAIとの対応を考える  評者:栩木 誠(元日経新聞編集委員)



 レストランに行くとロボットが店内を駆け巡り、インターネットで用語検索をすると生成AIによる解説が登場する。今や私たちの生活の至るところに、AIが浸透している。「AIが透明性、管理、運営などに使えないようにする」とか「その脅威を絶対視する風潮が強い」なか、支配的にAIの発展を身に着け、AIに負けぬようデジタルファシズムに悪用する懸念も深まる。
 私たちが、このAIといかに向き合うか、真剣にいかに、いま極めて重要に考えるべき時代が到来している。理論的AI論や、体験的AI論、社会的AI論という3つの側面から、その糸口をきめ細かに解き明かしている貴重な一冊である。
 生成AIは、私たちの生活、社会をどう変えるのか?「AIは人の心の働きに近づくか?」—こうした多様な疑問や課題について、「マルクスやエンゲルスならばどう答えるか?」と、著者は思いをはせる。そう考えて科学的社会主義の立場から解明を試みている。本書の特徴がある。
 中長期的に、AIの研究と開発は一層進む可能性が高い。それだけにAIには、利便性と危険性の両面があるだけに、その研究は、21世紀に生きる人類にとって、最重要課題でもある。
 現下のような大資本の管理・運営下ではなく、私たちに役立つよう上手に使いこなしていける術を身に着け、AIの発展に負けぬよう、AIと真摯に向き合い、それをいかに社会発展に役立たせていくか、いま極めて重要になっているのである。「広く深い認知能力と知的判断力を備えた人間はAIが進化しても決して負けない、負けてはならない」。  評者:栩木 誠(元日経新聞編集委員) (新日本出版社 2,200円) 

人間とAI──社会はどう変わるか
新日本出版社 (2025/7/30)