〈2025.10月号 書評〉橋本 健二(著)『新しい階級社会 最新データが明かす〈格差拡大の果て〉』・・・5つの階級に分かれた格差社会の実態を暴く 評者:栩木 誠(元日経新聞編集委員)

いまや日本社会の〝代名詞〟ともなったのが、 1980年代前後から顕在化してきた「格差拡大」である。格差が固定化され「新しい階級社会」が 創出されたのである。
前著『新・日本の階級 社会』で、その実態を描 いた著者が、「2022年三大都市圏調査」など、新たな調査データを駆使し、社会的分断が深刻化する「現実」を提示したのが本書である。
所得や雇用形態などの分析から、現在日本が資本、新中産、正規労働者 など、5つの階級に分か れていることを示す。特に「労働者階級の一部ではあるが、労働者階級としての基本的要件すら欠いているために、極端に貧困で、多くの困難を抱えている人々」を、著者は、「新しい下層階級=アンダークラス」と位置づけ、焦点を当てる。
日本は米国とともに、相対的貧困率の高い先進国だが、資本主義社会の最下層階級である「ア ンダークラス」の人数は約890万人、就業人口の13・9%を占める。
5つの階級構造が形成された要因、固定化しつつある現実、格差を巡る対立構造、男女間格差。 本書は豊富な調査資料・データの丹念な分析を基に、深刻化する日本の現実に切り込んでいるだけに、説得力がある。
ただ「最大多数である『リベラル』の人々を支持基盤とする野党と『伝統保守』の人々を支持基盤とする自民党を、二大勢力とする政党システムが実現すれば、日本社会は大きく変わるだろう」という、楽観的な結論付けには、やや疑問符が付く。それまでトレースしてきた、格差社会の実相との論理的な落差が、あまりにも大きいからである。(講談社現代新書 1,200円)栩木 誠