〈2026.1月号 書評〉青木 理 (著)『闇の奥──頽廃する権力とメディア、そして仄かな光をめぐるルポ・時評集』・・・〈鹿児島県警の闇〉事件から見えるメディアの現実  評者:河野 慎二(ジャーナリスト)



 長年にわたり権力とメディアの「闇」を 追及してきた著者が、鹿児島県警察本部を舞台に展開された「闇の奥」の 腐蝕に光を照射した。
 発端となったのはネットメディア「ハンター」 が2023年1月、「鹿 児島県警は性被害の捜査を求める女性の訴えを門前払いした」とスクープした記事だ。
 県民の訴えに耳を貸さない県警本部の対応に、藤井光樹巡査長が「ハンター」に内部告発した。
 鹿児島県警は24年4月8日、藤井巡査長を逮捕。同時に「ハンター」 を家宅捜索した。
 「ハンター」を主宰す る中願寺純則は、札幌のジャーナリスト小笠原淳との連携を密にしながら仕事を進めている。
 24年4月、小笠原のもとに10枚の文書が届いた。「闇を暴いてくださ い」と印字され「鹿児島 県警の闇」と題し4件の事案が列挙されている。
 鹿児島県警は5月31日に本田尚志前生活安全部長を、職務上知りえた情報を小笠原に漏らした国家公務員法違反容疑で逮捕した。
 本田前部長は逮捕後の勾留理由開示請求手続きの場で「野川明輝県警本部長が職員の犯罪行為を隠ぺいしようとしたことが許せなかった」と陳述した。「闇の奥」に迫る言に衝撃が広がった。
 本田前部長らはなぜ、地元に多数いる大手メディア記者ではなく、ネットメディアの記者を情報提供先に選んだのか。
 著者は「大手メディアは貴重な内部告発者からの信頼を失いつつあるという事実が垣間見える」と指摘する。
 そして「このままやり過ごせば、この国の主要メディアとジャーナリズムは、二重の敗北を喫することになる」と警告する。 評者:河野 慎二(ジャーナリスト) (河出書房新社 2,000円) 

闇の奥──頽廃する権力とメディア、そして仄かな光をめぐるルポ・時評集
河出書房新社 (2025/10/28)