〈2026.1月号 書評〉荻野富士夫 (著)『治安維持法と「国体」』・・・いま日本で急速に進む「新しい戦中」前夜の危機  評者:藤田 廣登(治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟顧問)



 昨年は治安維持法成立100年を迎え、治安維持法暴圧を告発する人々の運動が盛り上がりをみせた。同時に同法の研究も顕著な進展があった。
 その一つが、荻野氏の『検証・治安維持法―なぜ「法の暴力」が蔓延し たのか』(平凡社)であ り、さらに本書である。
 前著の末尾で、荻野氏は「戦前を席巻した『国 体』はまだ出現していないが国際緊張の暴発、排外主義の沸騰は『新しい戦中・新しい国体』を発 現」すると警告していた。
 治安維持法は第一条で「国体を変革するために結社を組織・加入」を犯 罪とした。その「国体」 とは「大日本帝国憲法」 に規定される天皇絶対の専制支配権力である。
 本書の第一部は、どのようにして「国体」が治 安維持法の根幹に据えられ、拡張されて行ったのかを、三つの論考で解明し、社会変革を進める運動を抑え込むだけではなく、思想・学問を統制し 戦争遂行体制構築に結びついた、と結論する。
 第二部では、日本共産党が「君主制」・「天皇 制」をどう捉え、闘かっ たか、に焦点を当てる。
 荻野氏は、「新しい戦 前」という表現を、タモ リ氏発言(2022年) より4年も早く使って,わが国の軍事大国化とそれに並行する現代版治安維持法体制の構築に警鐘を乱打し、本書では「新しい戦中」前夜と表現している。
 いま進む高市極右政権の危険性と参院選で躍進した参政党が、大日本帝国憲法と教育勅語をベースに、「国体」を盛りこ んだ「新日本憲法」(構想案)を掲げているだけに、本書は広く読まれてほしい。 評者:藤田 廣登(治安 維持法犠牲者国家賠償要求同盟顧問) (大月書店 2,800円) 

治安維持法と「国体」
大月書店 (2025/11/17)