〈2026.1月号 書評〉鈴木 宣弘 (著)『もうコメは食えなくなるのか──国難を乗り切るのにほんとうに大切なものとは』・・・地域の農と食と暮らしを強化する自給圏づくりの提唱 評者:栩木 誠(元日経新聞編集委員)


日本の農業と生産者に‟塗炭の苦しみ“を味合 せてきた、安倍農政の継承を標榜する髙市政権の登場で、「日本のコメ作 り」は今や、その生命線 すら絶たれようとしている。歴代自民党政権が進めてきた「米国への胃袋の従属化」の動きに、警 鐘を鳴らし続けてきた著者の危機感が、本書のタイトルに見事に凝縮されている。
国連機関が「飢餓国の仲間国入りした」とする日本で、いま深刻化する「令和のコメ問題」。生 産コストなどへの所得補償、供給先の出口調整など、生産者が希望を見い出せる農業政策の再構築がない限り、コメの作り手の退場は続く。だが農業軽視の政府の無策は続く。本書は「2030年 までの5年間が正念場」と、指摘する。
こうした日本農業の絶対危機のなかでも、「一 条の曙光」となるのが、「半農半X」など担い手の多様化、全国各地で進む生産者と消費者の連携による取り組みだ。世田谷区などの有機米給食や「14戸の作り手を900人の食べ手が支える」宮城県・鳴子温泉鬼首地区の試み、生協の供給圏づくりなど、創意工夫を凝らした「未来への希望の灯」が、燎原の火のように拡がりつつある。
「胃袋からの独立」を 実現するために、著者はこう呼びかける。
「自分たちが自分たちの地域から自分たちの力で地域の農と食と暮らしを強化して、『みんなで 作ってみんなで食べる』自給圏づくりを進めることが大切だ」と。
「コメが食えなくなる」社会の到来を防ぎ、日本農業を再興していくために何より重要なのは、私たち自身の自覚と具体的行動なのだ。 評者:栩木 誠(元日経新聞編集委員) (講談社+α書新書 950円)



