〈2026.2月号 書評〉豊田 直巳 (著)『消える風景 明日へのねがい──原発災害は今もそれでも「ふるさと」』・・・福島ー放射性物質は消えない250年以上も残る現実 評者:酒井 憲太郎(フォトジャーナリスト)


本書は、著者の写真絵本シリーズ〈それでも「ふるさと」〉全10巻の10作目。最初の全3巻は2019年に産経児童出版文化賞(大賞)を受賞。カバー写真は「笑」の文字を花で表した木村紀夫さんの庭。彼は父、妻、娘を震災で失い、3人の名前の慰霊碑を建てた。
3月11日、まどか保育園では子供たちを保育の先生らが急ぎ避難させ、カバンも靴もそのまま残っていた。まるで神隠しにあったようだ。その風景は2021年10月に写されて今も残っている。
津波の被害とは違う恐ろしさを感じさせる。除染と家屋の解体が進み、残されていたものが全て消え、その場所は更地になった。その先は「復興シンボル軸」と呼ばれる道路が建設中だ。
双葉町の「原子力正しい理解で豊かなくらし」の看板は、2019年には残っていたが今は撤去されている。壊れた柱や壁は「特定廃棄物」、敷地の庭や土地は「除去土壌等」と呼ばれる。
黒い大きなフレコンバッグに詰められ、仮置場に運ばれる。さらに大熊町と双葉町にまたがるエリア「中間貯蔵施設」へ集められる。中間貯蔵施設に田畑と家の土地を提供して、30年中間貯蔵施設地権者会を立ち上げた門馬幸治さん。中間貯蔵施設エリア内で土地を提供しなかった木村紀夫さんは「大熊未来塾」を立ち上げ、「未来を考える」ための伝承活動を続けている。津波で亡くなった小学1年生の娘、夕凪が眠っている土地でだ。
「複興でふるさとの風景は消えてしまったが、放射性物質は消えない。あと250年以上残る」と著者はあとがきに記す。 評者:酒井 憲太郎(フォトジャーナリスト) (農山漁村文化協会 2,500円)



