〈2025.8月号 書評〉小林 美穂子・小松田 健一(著)『桐生市事件──生活保護が歪められた街で』・・・「命の砦」を守る闘いの記録 評者:白井 康彦(フリージャーナリスト)
暴かれた「強者の闇」 を単行本にまとめて歴史的資料にする。ものの見事に実現した労作だ。生活保護制度は紛れもなく「命の砦」。ところが世 間には「なまけて生活保護を利用している人が多い」といった誤解が広がっている。 誤解 […]
〈2025.8月号 書評〉八木 絹(著)『ハンセン病差別の歴史を旅する ──「救済」への問いかけ』・・・差別の事実と向き合い「救済」への歩みを辿る 評者:霜村 三二(元都留文科大学講師)
「ハンセン病差別の歴史を旅する」という著者の呼びかけに、私はどう答えたらいいのか。差別の事実と向き合うときの「驚き」「憤り」という 感情を丁寧に深く追うことを「歴史を旅する」と 表現した著者の真っ直ぐな言葉が迫る。 […]
〈2025.8月号 書評〉春名 幹男(著)『世界を変えたスパイたち──ソ連崩壊とプーチン報復の真相』・・・暗躍する情報機関─その隠された真相に迫る 評者:孫崎 享(外交評論家)
本書の著者は、日本における情報機関、特にCIA研究の第一人者である。彼が2000年に 『秘密のファイルCIAの対日工作(上下)』(共 同通信社)を出版した時には驚愕した。 情報機関の活動は秘密に覆われている。それを一部 […]
〈2025.7月号 緑蔭特集〉ヤニス・バルファキス (著)、斎藤 幸平 (解説)、関 美和 (翻訳)『テクノ封建制 ──デジタル空間の領主たちが私たち農奴を支配する とんでもなく醜くて、不公平な経済の話。』・・・「個人の自律」を侵すテクノ封建主義 私のおすすめ:内田 聖子(アジア太平洋資料センターPARC共同代表)
インターネットは資本主義のあり様を根本から変え、破壊的で搾取的なシステムを作り上げた。これは 進歩なのか? ギリシャ生まれの「異端の経済学者」、ヤニス・バルファキス『テクノ封建制──デジタル空間の領主たちが私たち農奴を […]
〈2025.7月号 緑蔭特集〉林 典子 (著)『フォト・ドキュメンタリー 人間の尊厳──いま、この世界の片隅で』 ・・・あるジャーナリストの重い覚悟 私のおすすめ:中川 七海(報道機関Tansaリポーター)
私が所属する報道機関Tansaがニューヨークタイムスの取材を受けた際、林典子さんが、カメラマンとして、同道してきた。 後日、記事に載った写真に引き込まれた。Tansa編集長が、街路樹の下で立っている。報道機関の紹介だか […]
〈2025.7月号 緑蔭特集〉エマニュエル・トッド (著)、大野 舞 (翻訳)『西洋の敗北──日本と世界に何が起きるのか』 ・・・急速に進む西洋の自己崩壊 私のおすすめ:吉原 功(JCJ代表委員)
「リベラルな世界秩序」ー実は米国を盟主とし、NATO諸国、日本、韓国を従えた帝国の世界支配は、音をたてて崩壊しつつある、との見解を首肯する人は、どのくらいいるだろう。 トランプ2の乱暴な政策に困惑はしても「民主主義・法 […]
〈2025.7月号 緑蔭特集〉前川 貴行(著)『ボノボ──最後の類人猿』 ・・・コンゴ川流域のボノボ、謎の生態に熱帯雨林で迫る 私のおすすめ:土井 秀夫(元「アニマ」編集長)
ボノボはチンパンジーに似ており、かつては動物学の世界でも、ピグミーチンパンジーと称され20紀に新種として認知されたゆえに、「最後の類人猿」とされる。 しかし、チンパンジーとボノボの生態は真逆といっていい。個体や群れの間 […]
〈2025.7月号 緑蔭特集〉飯田 一史(著)『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか──知られざる戦後書店抗争史』 ・・・10年スパンで遭遇する出版界のビッグイシュー 私のおすすめ:池田 隆(元出版取次店 勤務)
読み終えて脳裏に浮かんだのは、1990年代の出版業界が好景気で浮かれ、遅れたバブルを謳歌していると揶揄されていた頃だ。採算など無視の新規出店が毎月30店以上、その陰でつぶれる本屋も毎月30店を超え、配本先書店一覧表の書 […]
〈2025.6月号 書評〉井出 留美(著)『私たちは何を捨てているのか──食品ロス、コロナ、気候変動』・・・食品が内包する地球規模の大テーマ 評者:大井 洋(筑波大学名誉教授)
著者は栄養学分野で研究を重ね博士号を取った後に、食品ロス問題ジャーナリストとして活躍している。本書は文献や情報検索に基づく明確な文章で書かれ、説得力のある内容となっている。著者のこだわりだけで書かれた本ではない。 食品 […]
〈2025.6月号 書評〉高世 仁(著)『ウクライナはなぜ戦い続けるのか──ジャーナリストが戦場で見た市民と愛国』・・・戦場の現場で掴んだ愛国を支えるもの 評者:武隈 喜一(元テレビ朝日モスクワ支局長)
ウクライナ停戦交渉を巡る情報が、メディアに溢れる。だが忘れてならないのは、今でも戦争が続き、市民の死傷者が続出していることだ。 本書は著者がウクライナの戦場を訪れ、ロケットランチャー部隊やドローン部隊、ロシア軍が残した […]
〈2025.6月号 書評〉吉田 敏浩(著)『ルポ 軍事優先社会──暮らしの中の「戦争準備」』・・・日本各地を歩いて分析 急速に強化される戦争態勢 評者:末浪 靖司(ジャーナリスト)
本書は、米軍と自衛隊の一体化が進み、強化されている実態を分析し、この問題に関わる情報を豊かに分かりやすく読者に提供している。 岸田内閣が決定し石破内閣が実行している「国家安全保障戦略」などの安保3文書と、そこに書かれた […]
〈2025.6月号 書評〉林 博史(著)『沖縄戦──なぜ20万人が犠牲になったのか』・・・天皇制という国家体制が押しつけた無慈悲な犠牲 評者:鈴木 耕(編集者)
自民党の西田昌司議員が、沖縄での講演会で述べた歴史改竄発言が、大批判を浴びている。 沖縄戦の実相をまったく学ばずに、いい加減な思い込みで、沖縄ヘイトに加担する政治家の底の浅さ。せめて本書を読むくらいの誠実さを持ってほし […]











