【66回 JCJ賞決まる】JCJ大賞 鈴木エイト『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』『自民党の統一教会汚染2 山上徹也からの伝言』、 JCJ賞5点 9月23日(土)午後1時から東京・全水道会館で贈賞式

日本ジャーナリスト会議(JCJ)は、1958年以来、年間の優れたジャーナリズム活動・作品を選定して、「JCJ賞」を贈り、顕彰してきました。今年で66回を迎えました。8月31日の選考会議において、次の6点を受賞作と決定いたしました。お知らせいたします。

【JCJ大賞】    1点
●鈴木エイト『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』
      『自民党の統一教会汚染2 山上徹也からの伝言』 小学館

【JCJ賞】     5点(順不同)
●台湾有事の内実や南西諸島の防衛強化を問う一連の報道  琉球新報社
●小山美砂 『「黒い雨』訴訟』  集英社新書
●「命(ぬち)ぬ水(みじ)~映し出された沖縄の50年~」 琉球朝日放送
●「ルポ死亡退院~精神医療・闇の実態~」 NHKEテレ
●「市民と核兵器~ウクライナ 危機の中の対話~」 NHKEテレ

※なおJCJ賞の贈賞式をリアル・オンラインで下記の通り開催いたしますので、ご参加のうえ取材・報道をお願い申し上げます。
贈賞式:9月23日(土) 13:00~ 全水道会館・4階大会議室(東京・水道橋)

▶お問合せは、下記までお願いします。
日本ジャーナリスト会議(JCJ)  〒101-0061東京都千代田区神田三崎町3-10-15
富士ビル501号 TEL:03-6272-9781 FAX :03-6272-9782(電話受付は月、水、金13時~17時) 
古川英一(携帯):090-4070-3172  大場幸夫(携帯):090-4961-1249
Eメール :office@jcj.gr.jp

     ※オンライン(zoom)は下記Peatixでご確認下さい。画像クリックで申し込みページにジャンプします
     https://jcjaward2023.peatix.com

スマホにかざすだけで参加申し込みのページにジャンプ                                                

■2023年JCJ賞贈賞作品一覧

【JCJ大賞】    1点
●鈴木エイト『自民党の統一教会汚染 追跡3000日
      『自民党の統一教会汚染2 山上徹也からの伝言』 小学館

 安倍晋三元首相が銃撃されて死亡してからまもなく1年になろうとしているが、『追跡3000日』は安倍氏暗殺からわずか3か月足らずで刊行された緊急出版であり、それまでメディアからほとんど注目を浴びることがなかった著者初の単著である。安倍氏暗殺は、山上徹也が統一教会による家庭崩壊の怨嗟を教会と密接な関係にあった安倍氏に向けた犯行であったことが明らかになり、自民党がまるごと統一教会に汚染されていることをかねてから掘り起こしてきた著者は一躍時の人となった。
 著者が信者による偽装勧誘(伝道)の現場に遭遇し、被害者の救出活動をはじめたのをきっかけに統一教会というテーマに取り組むようになったのは2002年、以後20年にわたってフリージャーナリストとしてはほとんど唯1人、統一教会問題、とりわけ自民党とのかかわりを身の危険を顧みない勇敢な取材活動に集中してきた。『追跡3000日』は、おもに2013年以降の閣僚も含む自民党国会議員や秘書、統一教会関係者への直接取材をドキュメントタッチで描き、綿密な調査で明らかになったタイトル通りの自民党の「汚染」の実態を暴いていく。『山上徹也からの伝言』では狙撃犯の山上徹也と著者がツイッターでの接点があったことが明かされ、統一教会の被害者である彼の行為とその背景を、太田光などとの対談も構成に含めて、統一教会問題と事件の背景を多様な視点でとらえようと試みている。
『追跡3000日』は緊急出版という制限から体系的にまとめられたものではないが、自民党の「汚染」の実態が臨場感のあるルポによって生々しく伝えられ、読者に衝撃を与える。事件後の自民党による「検証」は画餅に終わり、統一教会問題は、安倍氏暗殺事件から1年足らずでメディアでの追求・取材も激減、早くも雲散霧消しかねないありさまだ。そのようないまこそ、孤独な闘いを続けてきたフリージャーナリストの活動をたたえ、激励する意味で贈賞することが考えられるのではないか。

【JCJ賞】     5点(順不同)
●台湾有事の内実や南西諸島の防衛強化を問う一連の報道  琉球新報社
 「台湾有事」を煽り立てることで、日本国憲法の「専守防衛」を逸脱した、軍拡路線を強硬に進める岸田政権。その最前線に立たされる沖縄が、再び戦場と化される危機が迫っている。危険な野望の基礎となる「安全保障関連3文書」の取材を、全社挙げて続けてきた琉球新報が、南西諸島への部隊・ミサイル配置の計画はじめ、離島での戦闘を前提にした日米の軍事戦略などのスクープ、住民無視の防衛強化の実態を、多面的・重層的に浮き彫りにしている。「戦争か平和」か、という重大な選択を迫られている日本国民に、警鐘を強く鳴らす大作である。


●小山美砂 『「黒い雨』訴訟』  集英社新書
 著者は特に2019年秋から毎日新聞の原爆報道キャップとして「黒い雨」訴訟を取材・研究・報道をしている。著者は「黒い雨」訴訟を中心軸に据えて、何故戦後75年余りもの間置き去りにされてきたのか、提訴したのは何故か、「黒い雨」の実態、選別された被爆者の現状、裁判の経過、地裁・高裁判決は何を意味するのか、そして残されている課題は何かを追究した。此の著書は、日本の被爆者運動全体の歴史を含むいわば壮大と言っていい「黒い雨をめぐる被爆者運動の俯瞰図」をまとめ上げた初めてのドキュメントである。
 この中では、被爆者の運動の広がりを科学的根拠も深めずに強引に抑え込もうとする国や、国への一定の抵抗を見せる広島県や市、裁判所等が立ち回るが、それに抵抗する被爆者の願い、考えが鮮明に浮かび上がってくる。それはアメリカによる原爆投下、アメリカ占領下のプレスコード、ABCC、被爆者運動の抑圧など、被爆者に対する抑圧的歴史的事象を私たちに思い起こさせる。被爆者運動、核廃絶運動が直面している壁は大きい。今現在、先制使用を公言して核の脅しを強める核先進国は核戦争の危険を否応なしに強めている。だからこそ、著者が、あらゆる被ばく者の切り捨ては続いているが黒い雨訴訟での成果を前進させ、もっと長崎へ、もっと原発被害の福島へと運動を広げていく期待を語っている事は貴重だ。
 それと、昨今は分厚い新書が増えている中で、濃密な内容が本文約250頁に納められ、新書本来の機能であるコンパクトさとわかりやすさを達成している点も特記しておきたい。


●「命(ぬち)ぬ水(みじ)~映し出された沖縄の50年~」 琉球朝日放送
 2016年、沖縄県は45万人の水道水源になっている川や地下水から、有害な化学物質・PFASが検出されたと公表した。戦前戦後と沖縄の人たちの命をつないできた地下水が使えなくなるという深刻な問題だ。しかも、未だに汚染を止めることが出来ない。汚染源とみられる米軍基地に立ち入り調査が出来ないのだ。そこにはまた、「日米地位協定」が立ち塞がっている。QABは英国人ジャーナリストと共同、「日米地位協定の壁」を乗り越えて調査報道を継続した。番組を英語に翻訳して、アメリカのハーバード大学ライシャワー日本研究所が共催し「アジア研究協会」などで上映した。PFASによる水質汚染は東京の横田基地周辺でも、問題が顕在化しており、各地で市民グループの運動が加速されている。


●「ルポ死亡退院~精神医療・闇の実態~」 NHKEテレ
 2月15日、東京都八王子市の滝山病院を警察が捜索、患者への暴行の疑いで看護師を逮捕した。監督する東京都も調査に乗り出した。NHKは内部告発による病院内の映像や音声記録を入手。番組は「うっせえ! 殺すぞ!!」と患者に罵声を浴びせる看護師とみられる男性の声を伝える。「NHKですが」と記者がマイクを向けるが、無視して車で走り去る病院長。病院には1498人の患者が入院している。家族や病院関係者などへの取材から、「死ななければ退院できない」という病院の実情と背景が明らかになる。浮かび上がってきたのは、心の病を抱える患者たちを「お荷物」とみなす医療行政の構造だ。1年に及ぶ調査報道ドキュメント。


●「市民と核兵器~ウクライナ 危機の中の対話~」 NHKEテレ
 「核兵器が必要だ」。戦禍のウクライナで、市民の声が強まる。日本から帰国したボグダンもそう考える一人だ。ウクライナは1991年6月に独立。94年には、米ソに次ぐ世界第3位の保有核兵器2000発を放棄する「ブタペスト覚書」に署名した。ボグダンの祖父パルホネンコはこの歴史的決断に、教育相として関与した。祖父はボグダンに「私たちは正しい決断をした。核兵器なしで独立を守る」と語っていた。核大国アメリカの中枢にいたペリー元国防長官が「パルホメンコの言うことは正しい」とコメントする。祖父の言葉の意味を確かめようと、ボグダンは前線の兵士や、農民、医師らと対話を重ねる。核兵器の無い世界へ、終わらない問いへの闘いが続いて行く。