〈JCJ Online〉「被災から10年目、福島とつながるズーム交流会」
■開催趣旨:
2011年3月の東日本大震災から9年7カ月が過ぎた。
原発の炉心溶融という未曽有の大事故は、地域住民から故郷を奪うなど甚大な被害を与えた。放射性物質で汚染された原発の周辺。
あの素朴で、きれいな空気に包まれた福島の農村はもう戻ってこないのだろうか。
文明が破壊される様を目撃した私たちは何をどう考え、行動したらよいのか。
様々な迷いと疑問が交錯する。その中で、被ばくした牛の命を断ってはならないと、一念発起した女性がいる。
福島原発で危険な作業をする人々をずっと追いかけてきた新聞記者がいる。
現場を知る二人から率直なお話をうかがいつつ、被災10年を間もなく迎える福島とこれからの社会をともに考えたい。(2020.11.7)
■開催後記:
東京新聞福島特別支局の片山夏子記者が「ふくしま原発作業員日誌~イチエフの真実、9年間の記録」(講談社)を著すまでの取材の様子などを話した。帰還困難区域で被災牛を飼育し続けてきた谷 咲月さんが農地保全に牛を生かす手法を見出すまでの苦労と経験を語った。
■登壇者プロフィール:
・谷 咲月(たに さつき)
静岡出身。津田塾大学卒業後、海外で国際紛争について学ぶ。東京で第1~第3セクターの仕事を転々とする中、2011年4月旧警戒区域内の被災農家からの依頼を受け、福島へ。そのままだと荒れてしまう田畑に柵を作り、飼い主を探して放浪していた牛を誘導して入れ、草木を食べてもらうエコ草刈りを支援。
2012年非営利一般社団法人ふるさとと心を守る友の会設立。2013年~大熊町帰還困難区域内で、依頼のあった計8haの農地を牛力で回復・保全。2017年ふくしま復興塾第5期グランプリ、2018年日本トルコ文化交流会日本復興の光大賞受賞。
2019年自給率100%を目指し、冬季の飼料(保存草)作りスタート。2020年もーもーガーデン那須オープン、耕作放棄地を解消。牛と作物の実証研究とIoT化を進め、災害にも強い「人・動物・その他自然」が共存共栄する里山モデルを構築中。
・片山 夏子(かたやま なつこ)
中日新聞東京本社(東京新聞)の福島特別支局の記者。大学卒業後、化粧品会社の営業、ニートを経て、埼玉新聞で主に埼玉県警を担当。出生前診断の連載「いのち生まれる時に」でファルマシア・アップジョン医学記事賞の特別賞受賞。中日新聞入社後、東京社会部遊軍や警視庁などを担当。特別報道部では修復腎(病気腎)移植など臓器移植問題や原発作業員の労災問題を取材。名古屋社会部の時に、東日本大震災が起きる。震災翌日から東京電力や原子力安全・保安院などを取材。同年8月から東京社会部原発班で、作業員の日常や収束作業、家族への思いなどを綴った「ふくしま作業員日誌」を連載中。
同連載が2020年2月、「むのたけじ地域・民衆ジャーナリズム賞」大賞を受賞。連載や9年間の福島第一の作業、国の動き、作業員一人一人の人間物語をまとめた書籍「ふくしま原発作業員日誌~イチエフの真実、9年間の記録~」(朝日新聞出版)が講談社本田靖春ノンフィクション賞を受賞。