〈JCJ Online講演会〉『ルポ・収容所列島』を取材して---精神医療の今に何を見たか

お話:風間直樹さん(『週刊東洋経済』編集長)
         井艸恵美さん(東洋経済記者)
         辻麻梨子さん(Tansaリポーター)
進行:橋詰雅博(JCJ 運営委員)(2022.11.6)
     

視聴後記 3者が恐ろしい人権侵害をつくり出す
 『ルポ・収容所列島』を共著した風間、井艸、辻の3氏によるオンライン講演は、精神医療という医学分野を通じて日本社会の歪みの構図が図らずも明るみに出た。
 自分を守ってくれているはずの家族が後ろで糸を引く。こっそりと民間の「精神科移送業」に依頼し、身内を強引に精神科病院に収容させる。家族と示し合わせている病院の医師は、ロクに本人の説明を聞かずに統合失調症の疑いがあると診断し「医療保護入院」という名の下で拘束する。病院は病床を埋めることで経営を安定させる。精神的に回復しているにもかかわらず退院させないのはそのせいもある。行政も一役買う。「問題な人」を地域から追っ払えばなにより安心だ。
 講演で出なかったが、本には詳しく書かれている。自治体職員と精神科移送業者がタッグを組んで子どもを児童相談所に一時保護するという名目でシングルマザーを精神科病院に送り込んだのである。車内で病院に連れていくと告げられたその女性は子どもの一時保護をめぐり市の職員と言い合いをした際の職員の言葉を思いだした。「これ以上苦情ばっかり言っていると、精神科病院に連れていかれちゃうよ。上司からは『もうやっちゃえ』と言われている。いきなりアポなしでピンポーンって来て、ワゴン車に乗せられて連れていかれちゃうよ」―。
 家族、病院、行政の3者の利害一致が恐ろしい人権侵害を生み出している。
こうしたことが平然と行われることを長年許してきた社会の責任も重大だ。他人事ではないと知る人が増えれば、期待が先行してしまうが歪みの改善は少しでも進むのではないか。そうなってほしいと強く思う。(橋詰雅博 記)

 

ルポ・収容所列島: ニッポンの精神医療を問う
(東洋経済新報社)
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