〈JCJ沖縄声明〉政府と司法による辺野古新基地建設強行に抗議する

 名護市辺野古への新基地建設の設計変更承認申請を巡り、斉藤鉄夫国土交通相は国が玉城デニー沖縄県知事の代わりに承認する代執行を求め、福岡高裁那覇支部に提訴した。国が沖縄県の知事に対して代執行訴訟を提起するのは、翁長雄志前知事の時以来、2度目だ。民意を尊重した知事の決断を顧みず、沖縄に新たな基地を押し付ける手続きで許しがたい。

 最高裁判決は、国民の救済を対象とした行政不服審査法(行審法)を国の機関が用い、知事の不承認を取り消すという「法の乱用」を不問にした。玉城知事は、国内で工事経験のない軟弱地盤の存在や、絶滅危惧種のジュゴンへの影響、米軍普天間飛行場の危険性の早期除去につながらず合理性がないとして不承認としたが、最高裁は不承認の理由についての判断も示さなかった。行審法の決定には従うべきという形式上の判断を出したにすぎず、司法による不作為とも言うべき判決である。

 不十分な判決をよりどころにし、国が代執行の手続きをただちに進めるという一連の流れは、司法と政府の「共謀」による民意の弾圧にほかならない。

 司法の不作為は過去にも繰り返されてきた。村山富市首相が大田昌秀知事を相手取り起こした代理署名訴訟では、「知事が署名を拒否し続ければ、安全保障条約など国の義務が果たせなくなる」との理屈で県敗訴に。日米安全保障条約や日米地位協定の違憲性は何ら問われなかった。裁判の後、土地の強制使用手続きは「立会・署名」から米軍基地の永続的な使用を可能にする「公告・縦覧」に変更された。

 米軍普天間飛行場の移設先を県内に求める新基地建設は基地負担軽減方針に逆行している。「5~7年以内に返還する」とした1996年の日米政府の合意は反故にされた。政府はいまだに普天間飛行場の閉鎖・移転の時期を示していない。民意を軽んじ、地方自治をないがしろにする代執行訴訟の提起に抗議する。政府はただちに新基地建設を中止し、基地負担軽減について沖縄県と話し合うべきだ。

 民意を押しつぶす差別的政策に対して、全国の報道も不十分だ。この問題をどう報じるのか、報道機関も試されている。

                   2023年10月16日

                            日本ジャーナリスト会議沖縄(JCJ 沖縄)