〈2023年度JCJ 賞受賞記念 Online講演会〉「原爆「黒い雨」訴訟に学んだジャーナリストの仕事 小山 美砂さん(ジャーナリスト、元毎日新聞記者)
■開催趣旨:
第66回 JCJ賞に選ばれた『「黒い雨」訴訟』(集英社新書)は、広島への原爆投下後に降った「黒い雨」を浴びた被害者の戦後を追った初のノンフィクション作品です。広島市中心部を遠く離れた山村に暮らす被害者ら約100人を訪ね、同作品を書き上げた筆者は、「黒い雨被害者に、ジャーナリストとして進むべき道を教えてもらった」と話します。筆者は2022年末、6年勤めた毎日新聞を退社し、広島市に移住しました。決断の理由と原爆取材から学んだ経験を通して、ジャーナリストの仕事について考えます。
■講演者プロフィール:小山 美砂(こやま・みさ)
1994年生まれ。2017年に毎日新聞へ入社後、希望した広島支局に配属。被爆者や原発関連訴訟、広島への原爆投下後に降った「黒い雨」を浴びた被害者への取材に取り組む。2022年7月、「黒い雨被爆者」が切り捨てられてきた戦後を記録した初のノンフィクション『「黒い雨」訴訟』(集英社新書)を刊行。同書にて日本ジャーナリスト会議より第66回JCJ賞受賞。2023年からフリー、広島市在住。
※小山美砂さんnote:https://note.com/s__mallmount/
【JCJ賞】小山美砂 『「黒い雨」訴訟』 集英社新書
著者は特に 2019 年秋から毎日新聞の原爆報道キャップとして「黒い雨」訴訟を取材・研究・報道をしている。著者は「黒い雨」訴訟を中心軸に据えて、何故戦後 75 年余りもの間置き去りにされてきたのか、提訴したのは何故か、「黒い雨」の実態、選別された被爆者の現状、裁判の経過、地裁・高裁判決は何を意味するのか、そして残されている課題は何かを追究した。此の著書は、日本の被爆者運動全
体の歴史を含むいわば壮大と言っていい「黒い雨をめぐる被爆者運動の俯瞰図」をまとめ上げた初めてのドキュメントである。
この中では、被爆者の運動の広がりを科学的根拠も深めずに強引に抑え込もうとする国や、国への一定の抵抗を見せる広島県や市、裁判所等が立ち回るが、それに抵抗する被爆者の願い、考えが鮮明に浮かび上がってくる。それはアメリカによる原爆投下、アメリカ占領下のプレスコード、ABCC、被爆者運動の抑圧など、被爆者に対する抑圧的歴史的事象を私たちに思い起こさせる。被爆者運動、核廃絶運動が直面している壁は大きい。今現在、先制使用を公言して核の脅しを強める核先進国は核戦争の危険を否応なしに強めている。だからこそ、著者が、あらゆる被ばく者の切り捨ては続いているが黒い雨訴訟での成果を前進させ、もっと長崎へ、もっと原発被害の福島へと運動を広げていく期待を語っている事は貴重だ。
それと、昨今は分厚い新書が増えている中で、濃密な内容が本文約 250 頁に納められ、新書本来の機能であるコンパクトさとわかりやすさを達成している点も特記しておきたい。
■オンライン講演開催日時:11月19日(日)14:00〜16:00(zoomにてオンライン 、見逃し視聴用記録動画の配信有り)
■参加費:500円
当オンライン講演会に参加希望の方はPeatix(https://peatix.com/event/3740114)で参加費をお支払いください。
※スマホでQRコード読み取り、お申し込み出来ます
(JCJ会員は参加費無料・先着100名の定員となります)
■主催:日本ジャーナリスト会議(JCJ)
03–6272-9781(月水金の13時から18時まで)
https://jcj.gr.jp/
■JCJ会員の方はJCJホームページ・ユーザー登録をすることで記録動画をご覧になれます。