〈JCJ関西支部声明〉読売大阪本社と大阪府の「包括連携協定」についてJCJ声明万博・カジノ推進へ、新聞が広報機関になる恐れ

読売新聞大阪本社が昨年12月27日、大阪府とパートナーとなる「包括連携協定」を結んだ。
「府民サービスの向上、府域の成長・発展を図る」ことを目的とし、教育・人材育成、情報発信、安全・安心、子ども・福祉、地域活性化、産業振興・雇用、健康、環境など8分野で連携を進めるという。大阪府はこれまでに50を超える企業や大学などと包括連携協定を結んでいるが、報道機関との協定締結は初めてだ。
言うまでもなく、ジャーナリズムの役割は権力の暴走をチェックすること。そのためには公権力と対峙し、十分な距離感を保つことが求められる。報道機関が、それも国内最大発行部数を誇る読売新聞が行政と協力関係を結ぶことは異常な事態だ。ジャーナリズムの役割を放棄した自殺行為に他ならない。
ましてや、大阪では10年以上にわたって「大阪維新の会」による府政・市政が続いている。吉村洋文知事は大阪維新の会代表であり、松井一郎市長は国政政党「日本維新の会」の代表だ。取材する側が自らの立ち位置を見誤れば、維新にとって都合のいい広報機関になってしまう。
協定締結後の記者会見で、読売新聞大阪本社の柴田岳社長は「大阪府としては読売新聞に取材、報道、情報に関して特別扱いは一切ない。読売新聞も取材報道の制限は一切受けない」と強調した。だが、連携事項の一つ、「情報発信」の取り組みについて「生活情報紙『読売ファミリー』や『わいず倶楽部』などの読売新聞が展開する媒体や各種SNSなどを活用して、大阪府の情報発信に協力する」と記載されている。
さらに、「地域活性化」の取り組みには「2025年大阪・関西万博の開催に向けた協力」も盛り込まれている。維新の府政・市政は、万博の会場となる大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)に、カジノを中核とする統合型リゾート(IR)の誘致を目指している。松井市長は「夢洲にカジノをつくるときには税金は使わない」と言った舌の根も乾かぬうちに「汚染土壌が出てきたので790億円を払う」と言い出した。万博を隠れ蓑にした夢洲へのインフラ整備費用は今後も膨れ上がっていくことだろう。
柴田社長は「万博に関しても問題点はきちんと指摘し、是々非々の報道姿勢を貫いていくつもりだ」と述べたが、「万博開催に向けた協力」を約束した読売新聞が万博やカジノ反対派の主張を果たして取り上げるだろうか、大いに疑問だ。
 今後、読売新聞に続くメディアが出ないとも限らない。すでに在阪テレビ局は連日のように吉村知事を出演させ、吉本芸人らが無批判に持ち上げる「維新礼賛」報道が続いている。
「誰が泣いているのか、泣いている人に寄り添え」。大阪読売の社会部長だった黒田清さんの言葉だ。市民の信頼を失ったメディアは衰退する。ぜひとも、ジャーナリズムの原点に立ち返ってもらいたい。

         2022年1月31日
                   日本ジャーナリスト会議(JCJ)
                   JCJ関西支部

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