〈JCJ声明〉右派論客の「虚偽と改ざん」明らかにした植村裁判 最高裁の不当な決定にあたり、日本ジャーナリスト会議(JCJ)声明

2015年の提訴以来、6年近くにわたった元朝日新聞記者・植村隆氏による名誉棄損訴訟は、言論界の歴史に刻まれるだろう。旧日本軍による朝鮮人女性ら に対する人権侵害、従軍慰安婦の問題を正面から取り上げ、その存在を否定す る「右派の論客」といわれる人たちの「いいかげんな姿」を法廷の内外で明ら かにしたからだ。
札幌訴訟で被告となった櫻井よしこ氏は、元従軍慰安婦の金学順さんが日本政府を相手に起こした裁判にからみ、「訴状には、14歳のとき、継父によって 40円で売られたこと(中略)などが書かれている」と様々な出版物で何度となく主張した。そのうえで「人身売買」などについて新聞記事で触れなかった植村氏を「捏造」記者と中傷した。
しかし現実の訴状にその記述はない。金学順さんを取材して雑誌に書いたフリーランスライターの記事を読んで、間接的に櫻井氏は「40円」を知ったのだという。直接の当事者取材をせず、第2次資料の雑誌記事を頼りにし、しかも 「訴状に書かれている」と虚偽の記述を続けた。事実を確認しないその安易さ、 軽さに私たちは驚く。少なくとも植村氏は金さんと直接会い、話を聞いている。 現場に足を運ぶか否か、ジャーナリストにとって、この差は大きい。
東京訴訟での被告、西岡力氏も信じがたい行為に及んでいた。韓国ハンギョレ新聞の金さんに関する記事を著書で引用しながら、末尾に「私は、40 円で売 られて、キーセンの修業を何年かして、その後日本の軍隊のあるところに行き ました」と、同紙に書いていない文章を付け足していたのだ。記事の改ざんで ある。
金学順さんは商行為で軍に近づいて慰安婦になったと一方的に想像する両氏 は、「40円」を強調したいがためか、おかしな記述をした。だが実際の金さんは 中国で、日本軍人によりトラックで慰安所に連行され、将校級の男からいきなりされた。典型的な戦時性暴力。その悲痛な証言を無視したままだ。
植村氏を「捏造記者」と櫻井氏、西岡氏が新聞や出版物で中傷した結果、激しい植村バッシングが起きた。ネット上に家族がさらされ、殺人脅迫にまで至った。そのムードを煽った両氏の責任は重い。
迫害されているジャーナリストの支援を、日本ジャーナリスト会議は大きな活動目的の一つに掲げている。最高裁の不当な決定に抗議するとともに、従軍慰安婦の歴史のさらなる解明と、言論を脅迫と暴力で抑え込もうとする勢力との闘いに、これからも全力で取り組む決意だ。

2021年3月12日
日本ジャーナリスト会議

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