JCJ「夏のジャーナリスト講座2022」開く

「ジャーナリスト」2022年8月号 通巻773号

 

JCJ「夏のジャーナリスト講座」開く
 JCJは7月6日から7回シリーズで学生向けに「夏のジャーナリスト講座」を開いている。最初の3回分をまとめて報告する。

米軍基地は生活の場と隣り合わせだ
▶明 真南斗(あきら・まなと)・琉球新報記者(7月16日) 沖縄にある31の米軍専用施設は、総面積では県内の8%を占め、生活の場と隣り合わせだ。
 宜野湾市にある普天間飛行場そばの普天間第二小で体育の授業中、米軍ヘリの窓が落下し、奇跡的に被害はなかった。学校の抗議に対し、沖縄防衛局は体育場に防護用の屋根を設置した。ヘリや飛行機が通過するたびに児童が屋根の下に逃げる日常光景はおかしい。
 いま防衛省を担当しているが、全国紙の記者は沖縄の民家で銃弾が見つ「かっても被害がないなら問題にもしない。地元支「局の記者のやるべきことで、自分らには関係がないといった印象だ。
 航空機の泡消火剤問題では、発がん性の有機フ「ッ素化合物PFOSなどの血中濃度が高いことが宜野湾市民を対象にした京都大の調査で判明し、健康問題でもある。沖縄戦などの歴史問題も含め、基地集中の不条理を指摘し、弱者に寄り添って報道し、伝えていくこ|とが地元紙記者の使命と考えている。

聞き取りを重ねて励まされ連載執筆
▶河原千春・信濃毎日新聞文化部記者(同24日) 女性史研究家・もろさわようこさん(97)の生き方を書いた『志縁のおんなもろさわようことわたしたち』(一葉社)を昨年末に出版した。
 2013年に、もろさわさんの「歴史を拓(ひら)くはじめの家」を取材したのをきっかけに聞き取りを重ね、1年には連載記事「夢に翔(と)ぶ — もろさわようこ94歳の青春」を執筆した。代表作『おんなの戦後史』などを著したもろさわさんは、フェミニズムにも多大な影響を与えてきた女性史研究の先駆者のひとり。長野、沖縄、高知を拠点に生活の場を移しながら、女性や部落、沖縄差別に目を向けて行動している。
 「人の取材をしたくて地方新聞社を選んだ」河原さんのテーマは「スペーシャリストよりゼネラリストになる」。受講者に、文化部記者の仕事を具体的に紹介する一方、舞台演出家・串田和美さんを取材すべく準備を進めていると、話した。


事故か? 自殺か? スマホ時代の陥穽
小松玲葉・TBS報道局社会部記者(同30日)
 入社4年目、現在の職場は警視庁記者クラブだ。新人の時は、房総半島を襲った台風の被災地を取材。ドキュメント「それでもここにいたい〜3度の台風に遭って」にまとめた。
 警察取材で大事にしているのは、「何かおかしくない?」という疑問だ。その一例が21年1月に東京の東武東上線・東武練馬駅で起きた踏切事故だ。31歳の女性は遮断機が下りた踏切内で立ったままスマホを見ていて、電車にはねられ、亡くなった。
 警察の発表は「事故か自殺かわからない」。現場を踏査し、警報音が鳴る中、スマホを見ている女性の姿を当時の記録映像から確認した。踏切の外にいた10人近くも、みなスマホに目を落としていた。「危ない」と声をかける人もいない。
 女性は自殺ではなく、踏切の外にいると勘違いしていたのではないかと。報じた。
スマホ時代の落とし穴として、大きな反響があった。